離婚訴訟を提起する(裁判離婚)
裁判離婚とは
訴訟を提起して、離婚を認める判決を得るか、訴訟上の和解をすることを裁判離婚といいます。
離婚を認める判決を得た場合は、相手方の意思に関わりなく強制的に離婚が成立することになります。
離婚事由
裁判で離婚を認めてもらうためには、離婚事由の存在が必要です。
民法では裁判上の離婚事由として次のとおり定めています。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
1.配偶者に不貞な行為があったとき
「不貞な行為」とは、判例によると「配偶者のある者が自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」とされています(最判昭48年11月15日)。
ここでいう「性的関係」の意味については諸説ありますが、判例の認める「不貞な行為」のほとんどは、肉体関係があることに限定しています。
不貞行為の存在を証明するためには、不倫相手とホテルに入った写真や2人で旅行に行った記録などかなりはっきりした証拠が必要になりますので、探偵や調査会社に証拠収集を依頼することも多いようです。
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき
「悪意の遺棄」とは、正当な理由なく夫婦間の同居・協力・扶助義務(民法752条)を継続的に果たさないことをいいます。
典型的な例としては、勝手に家を出て行って、生活費の送金を全くしない場合ですが、単に同居協力義務に違反しているだけでは、「悪意の遺棄」とは認められません。
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
長期間にわたり配偶者の生死が不明な場合に婚姻関係を解消する方法としては、失踪宣告の制度もありますが(民法30条)、失踪宣告を得るには、7年間生死不明であることが要件とされています。
一方、3号の離婚事由により離婚訴訟を提起すれば、3年間の生死不明で離婚をすることができます。
なお、失踪宣告の場合は、後日、配偶者の生存が明らかになって失踪宣告が取り消されると婚姻関係が復活しますが、離婚訴訟により離婚した場合には、復活することはありません。
4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
「強度の精神病」とは、夫婦間の協力・扶助義務(民法752条)十分に果たすことができない程度の精神障害のことをいいます。
ただし、「強度の精神病」と認められる場合であっても、配偶者の離婚後の療養・生活等について具体的な方途を講じ、その方途の見込みがついていない限り、離婚を認めないとするのが最高裁の見解です。
なお、心神喪失状態にある配偶者を相手方として訴訟を提起する場合には、後見開始の審判を経た上で、後見人または後見監督人を被告として訴訟することになります。
5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
客観的に判断して婚姻関係が破綻していて回復する見込みのない場合です。
この場合、別居の有無やその期間が重視されます。
具体的な例としては、
- 家庭内暴力(DV:ドメスティック・バイオレンス)
- 性格の不一致
- 性交不能・性交拒否・異常性癖
- 宗教活動
などを原因として婚姻関係が破綻した場合が挙げられます。
また、不貞行為の立証が難しい場合や強度とはいえない精神障害がある場合など、前記1号から4号の離婚事由が認められない場合でも、それらを理由に婚姻関係が破綻している場合、5号の離婚事由により離婚が認められることもあります。
附帯処分等の申立て
離婚する際には、親権者の指定、財産分与、養育費など同時に決めるべき事項が様々あります。
離婚訴訟を提起する場合には、それらの事項についても併せて審理を行うよう求めることができます。
このことを附帯処分等の申立てといいます。
離婚訴訟の流れ
離婚訴訟は、訴状を作成し、管轄の家庭裁判所に提出することから始まります。
訴状を提出する際に要する費用は次のとおりです。
- 手数料:13,000円(附帯処分等を申し立てる場合は、附帯処分1件につき1,200円加算します。)
※損害賠償(慰謝料)を離婚と併せて請求する場合は、求める金額により印紙代が増加する場合があります。 - 予納郵券:7,000円(家庭裁判所によって異なります。)
また、添付書類として次の書類を併せて提出します。
- 夫婦の戸籍謄本
- 調停(不成立)調書または調停不成立証明書
- 証拠書類等
離婚訴訟の期日の流れ
訴訟を提起すると、裁判所は被告に対して訴状を送達し、1回目の期日を指定します。
訴状の送達を受けた被告は、訴状に記載された内容に対する認否や反論を記載した答弁書を提出します。
訴訟期日においては、争点の整理手続を経て、準備書面により互いの言い分を主張し、証拠書類や証人尋問等によって自身の主張する事実を立証していきます。
期日は、通常1カ月に1回のペースで行われ、審理が尽くされるまで続くことなりますが、離婚訴訟の場合は、通常、1年以上の期間がかかります。
裁判所が審理が尽くされたと判断すると、判決が言い渡され、訴訟は終了します。
訴訟が終了すると、裁判所から判決書の正本が当事者双方に送達されます。
判決内容に不服がある場合には、判決書を受け取ってから2週間以内に控訴をすることができますが、いずれも控訴しないまま控訴期間が経過すると判決が確定します。
裁判離婚のメリット・デメリット
裁判離婚のメリットとしては、次の点が挙げられます。
- 相手に離婚意思がなくても離婚することができる。
裁判離婚のデメリットとしては、次の点が挙げられます。
- 民法所定の離婚事由が必要である。
- 離婚事由の存在を証拠によって立証する必要がある。
- 原則として調停を先に申し立てる必要があるので、解決までに時間がかかる。
裁判離婚は、協議や調停をしても離婚の合意が成立しなかった場合の最後の手段といえます。
離婚事由の存在を立証するには大変な困難を伴いますし、慰謝料や財産分与の請求が絡む場合は、相手方も必死に反論をしてきます。
したがって、離婚訴訟は長期間に及ぶことが多く、精神的にも肉体的にも疲弊することを覚悟しなければなりません。
離婚調停が不成立に終わり、離婚訴訟をお考えの場合は、弁護士に相談することをお勧めいたします。
弁護士に離婚訴訟(裁判離婚)をお任せいただくメリット
弁護士に離婚訴訟(裁判離婚)をお任せいただくと、次のようなメリットがあります。
1.勝訴の確率が高くなります。
離婚訴訟で勝訴するには、離婚事由の存在を裏付ける証拠を集めなければなりません。
また、特に「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」が離婚事由である場合には、具体的にどのような事実を主張していくのかを考えることが非常に重要になります。
弁護士でなければ、離婚訴訟を適切に進めていくことは難しいでしょう。
2.離婚以外に決めるべきことを漏らしません。
離婚にあたって検討すべきことは「どうやって離婚するか」だけではありません。
財産分与、親権、養育費、面接交渉、慰謝料など、決めるべきことはたくさんあります。
しかし、当事者同士で話し合った場合には、離婚を優先して決めてしまい、重要な事項が漏れてしまう場合があります。
弁護士に任せていただいた場合には、離婚に関するこれらの事項も漏らすことなくしっかりと交渉します。
3.相手方と会う機会を減らすことができます。
相手方と離婚の話をするには相当なエネルギーが必要になります。
非常に大きな心理的ストレスを感じる場合も多いでしょう。
離婚訴訟をご依頼いただいた場合、弁護士があなたに代わって訴訟を進めていきますので、相手方と会う機会をなるべく少なくすることができます。
詳しくは初回無料(1時間まで)の面接相談で
ハイフィールド法律事務所は、離婚に関するご相談を初回の1時間までは無料で承っております。
無料面接相談の中では、離婚問題解決のアドバイスのほか、ご依頼いただいた場合の料金についても詳しく説明させていただきます。
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